HIV(AIDS)

AIDS(エイズ)とは

AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome)は後天性免疫不全症候群です。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して免疫力が低下すると、健康であれば問題を起こさない細菌やウイルスによって様々な病気を発症します。エイズ(AIDS)発症の目安となる指標の疾患が23種指定されており、指標疾患の発症によってエイズ(AIDS)発症の診断を行います。HIVに感染していても適切な治療を続けていくことでエイズ(AIDS)を発症させずに健康を維持できるようになってきていますので、疑わしい場合にはできるだけ早く検査を受けて適切な治療につなげることが重要です。

感染機会から3か月以上経過
していないと、確実な陰性判断
はできません

HIV感染の有無は、性行為など性的な接触があった直後には分かりません。可能性のある行為後、早ければ4週間で陽性が確認されるケースもありますが、確実に陰性であることを判断するためには行為後3か月以上経過してからの検査が必要です。3か月以上経過してからでなければ確実な陰性の判断ができないという点に関しては、国のガイドラインにも明記されています。

スクリーニング検査と
確認検査によって診断します

HIVのスクリーニング検査は感度が高く、スクリーニング検査で陽性の場合には別の検査による確認検査で陽性を確認後、HIV感染と診断されます。

発症させない治療が
可能になってきています

HIV感染陽性の場合でも、医師の指示に従って適切な治療を続けていくことでAIDSを発症させず、健康を保っていくことも可能になってきています。以前はHIVに感染することが死につながるイメージがあったと思いますが、現在は早期発見と早期の適切な治療が重要な病気になっています。進行させないためにも、早期発見が不可欠ですので、「もしかしたら」と感じたら速やかに検査を受けてください。

HIV感染している方でも
ご自分の子どもを持てます

HIV感染陽性の場合でも、人工授精や体外受精による妊娠、帝王切開による出産、粉ミルクでの授乳といった対策をとることで子どもを持つことが可能です。
妊婦健診でもHIV検査を行うことがありますが、妊娠初期にHIVに感染が発覚した場合も、上記の対策に加え母子感染を予防する服薬治療を行うことで産まれてくる赤ちゃんへの感染率を1%以下に抑えることができるといわれています。

感染経路

HIVウイルスは分泌液、精液、腟分泌液、血液、母乳に多く含まれており、粘膜や皮膚の傷からウイルスが侵入して感染します。性行為など性的な接触、血液感染、母子感染などによって感染しますが、汗、涙、唾液、尿、便などによる感染はありません。

性行為など性的な接触による感染

セックス、オーラルセックス、アナルセックスで感染する可能性があります。

血液感染

注射器の使い回しなど、特殊な状況で起こります。

母子感染

母子感染を起こしますので、妊婦健診の検査項目にHIVがあります。健診を必ず受け、陽性の場合には母子感染を防ぐための治療が必要になります。

AIDSの症状

HIVに感染すると、免疫をコントロールしているCD4陽性細胞にウイルスがつき、壊しながら増殖して免疫力を低下させます。免疫が低下することで、その段階により、様々な症状を起こします。無症状期がありますが、放置していると進行し高度の免疫不全状態となります。健康な状態では感染しないような弱い病原性の細菌・真菌・ウイルスによる感染症を生じたり悪性腫瘍を合併するとAIDS発症となり、多くの深刻な症状を起こす可能性があります。現在は早期発見と適切な治療によって無症状期をできるだけ長く続け、AIDSを発症しないようコントロールする治療が可能になってきています。

感染初期

無症状の場合もありますが、感染から2~4週間に症状が現れることもあります。症状の内容は発熱、のどの痛み、筋肉痛、倦怠感などで、風邪やインフルエンザに似ています。

無症状期

免疫力が徐々に低下している状態ですが、特に症状を起こさない無症状の時期です。無症状期の期間には個人差が大きく、感染から1年程度でAIDSを発症するケースもありますが、10年以上発症がないケースもあります。できるだけ早期に発見して無症状期を長く維持する治療を受けることが重要です。

AIDS発症期

無症状期に適切な治療を受けずにいると、慢性的な下痢や寝汗、急激な体重減少などの症状を起こし、やがて悪性腫瘍や神経障害といった深刻な症状も現れてきます。こうした症状を起こさないためにも、早期発見と適切な治療が不可欠です。

AIDSの検査

潜伏期間と検査可能時期

血液検査を行って抗体の有無を確認します。ただし、感染してすぐには抗体ができておらず、正確な診断はできません。抗体ができる期間には個人差があり、早くても4週間、遅い場合には8週間以上かかることが分かっています。確実に陰性の判断をするためには、感染が疑われる行為から3か月以上経過してからの検査が必要であり、国が定めた治療のガイドラインでも3か月以上経過してからの検査が推奨されています。

スクリーニング検査と確認検査

陽性を見逃さないためにHIV検査はまず感度の高いスクリーニング検査を行い、この検査で陽性になった場合に詳細な確認検査を行って診断しています。スクリーニング検査と確認検査の両方で陽性となった場合にHIV感染と診断されます。
ただし、疑わしい行為から3か月以内に受けた検査の場合、スクリーニング検査が陰性でも感染している可能性があります。その場合には、疑わしい行為から3か月以上経過してから改めて再検査を受けてください。

HIV検査を受けるには

保健所保健所では、匿名で無料の感染検査を受けられるようになっています。自治体により、予約が必要な場合や、日時や場所が限定されている場合がありますので、お住まいの自治体のホームページなどをご確認ください。
なお、泌尿器科・産婦人科をはじめ性感染症の専門的な診療が可能なクリニックや、エイズ治療拠点病院などでもHIV検査を受けられます。医療機関によって費用や内容などは異なりますが、診療時間内であれば受診日時にも制約がなく、通院が楽な医療機関を選ぶこともできます。そして、万が一感染していた場合にも適切な治療をスムーズに受けることができます。

献血は厳禁

献血された血液は様々な検査をされて輸血に提供されます。当然HIV感染の有無も確認しますが、感染していた場合にも献血した方へ結果が報告されることはありません。HIV感染の有無を調べるための献血は無意味です。さらに、もしHIVに感染していた場合、採血や検査を担当する方に感染リスクが生じます。HIVは血液を介して感染しますので、感染の可能性がわずかでもある場合、感染を広げる恐れのある献血という行為を絶対に行うべきではありません。
なお、HIVに感染している場合でも名前や住所などの個人情報が自治体や国に報告されることはありません。また、医療従事者には厳しい守秘義務が法律によって義務づけられています。治療に関する助成制度も整備されており、ご自分で申請することによって費用負担も軽減可能です。安心してご相談ください。

HIVの治療

HIV治療は治療方法が確立されてきており、AIDS発症を抑えて無症状の期間を長く維持し、健康に暮らしていけるようコントロールできるようになってきています。進行する前に早期発見し、適切な治療を続けることが発症の抑制や健康な生活には不可欠です。
日本では、全国382施設にあるエイズ治療拠点病院で、HIV感染症・AIDSの治療を受けることができます。当院では、HIV確認検査でも陽性となり感染と診断された場合には、専門医療機関をご紹介し、スムーズに適切な治療を受けていただけるようにしています。

HIVの予防

日本での感染は、セックス・アナルセックス・オーラルセックスなど、性的な接触による感染がほとんどを占めます。最初から正しくコンドームを装着し、最後までつけておくことでHIV感染のリスクも低減できます。
母子感染に関しても有効な対策が可能になってきています。予防治療薬内服、帝王切開による出産、母乳による授乳を避けるといった対策を行うことで感染を1%以下に抑えられるとされています。

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